平素よりお世話になっております。
平泳ぎ本店のことを気に掛けて頂きましてありがとうございます。
平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co.主宰の松本一歩です。
このたびBITEという演劇雑誌の編集長である園田喬しさんという方のお力をお借りして、Audi-torium(オーディトリウム)という演劇のイベントを主催することになりました。
(『演劇ぶっく』での平泳ぎ本店のインタビューを担当してくださった方です。)

今回こうしたイベントを主催することになった経緯と近況報告を、なるべくかいつまんで書いておこうと思います。
昨年のコロナ禍以来、なにしろ安全第一を旨とする平泳ぎ本店ではこれまでのような団体としての劇場での公演や稽古場での創作活動をいったん中止し、状況の見通しがつくまで冷温保存ともいうべき休止状態となっていました。
その間、期を前後して、これまで平泳ぎ本店で活躍してくれていた二人の俳優が演劇活動から離れなければならなくなりました。
ひとり(宍倉直門)は就職し、ひとり(ニノ戸新太)は故郷の畑を耕すために地元へと戻りました。
(※ニノ戸は表現活動は継続して行っているとのことです。)
そんななか、今年(2021年)の春先に、このコロナ禍の影響を受けてとりわけ若い世代の人たちが劇場へ足を運ぶことが出来ず、創作をすることも出来ずに大きな影響を受けているという声を見かけました。
私自身、劇場でたくさんの演劇作品を観られたことがもとで今このように演劇活動ができているという自覚があり、若いうちに劇場へ足を運ぶ機会が減ってしまうのはとても辛いだろうと思いました。
自分なりにいろいろと考えてみて、そんな若い人たちへ向けて、たくさんの演劇団体をまとめて観て貰えるようなショーケースのようなイベントが企画できないかと考え、BITE編集長の園田さんへとお声がけをさせて頂きました。
BITEという演劇雑誌には、私自身が劇場で観たり、名前を聞いたり憧れたりしたことがあるような小劇場のアーティストの方たちのことが目いっぱい詰まっていました。
そんな雑誌を編んでいらした園田さんに全体のプログラムディレクターをお願いすることで、たとえば雑誌をひらくように、いろんなアーティスト、批評家や研究者が一堂に会する刺激的な時間になったらいいなと思って今回このイベントを企画しました。
今回、平泳ぎ本店としてこのイベントを運営します。
先にも書いた通り、俳優が少なくなってしまったことや、あるいはコロナ禍での創作ということに関しての距離感もまた人それぞれであったり、ひとりひとりの外部での出演予定が重なったという事情もあり平泳ぎ本店としての創作は叶いませんが、いかにパフォーマティブにこうした場を運営できるか、ということを考えたいと思っています。
少なからずコロナ禍の影響を受け、まだ団体としては6年そこそこ(since2015)ですが、これまでずっといっしょにやってきた俳優が演劇から離れていってしまうことの寂しさと悲しさを初めて感じました。
この非常事態にあって、文化芸術をとりまく様々な制度や環境が整っていないことが明らかになり、たくさんの人たちの辛い声も日々聞こえます。
それでもまだなんとか幸いにも演劇を続けることができるのならば、せめてすこしでも楽しいことを考えていたい、というのが正直な心情です。
これでもずいぶん長くなってしまったので、あいだを二個、三個飛ばして申し上げるとすれば、平泳ぎ本店は5年以内に野外で演劇の公演を行わなければなりません。
イントレを何本も立てて、今まだ誰も想像していないような場所で、野外で、演劇の公演を行わなければなりません。
そうしてまた、平泳ぎ「本店」というくらいですから、実店舗も構えなければなりません。
ライブハウスのような、演劇のための場所です。
シアトルのCROCODILE CAFEのようなカフェ&バーとライブハウスが一体となり、いいバンドがライブをしていればカフェのお客さんも追加のフィーを支払ってライブハウスへと進む。そんなイメージです。
毎夜よくわからない人達がうごうごしていて、そして日々いい演劇が上演され、うまいクラフトビールもタップで出す。
きちんと地下には稽古場も並置し、かつて六本木の地下のオンシアター自由劇場で串田和美さんと吉田日出子さんがそうしたように、俳優たちが一生懸命稽古をする。
状況は厳しく、決して予断を許すものではありませんが、粘って5年後10年後に繋げられるよう、一生懸命このAudi-toriumという場を運営したいと思っています。
よろしくお願いいたします。
平泳ぎ本店 主宰
松本一歩