今回上演する”The Dishwashers”ですが、登場人物が
・ドレッスラー
五十歳前後、中間管理職気取りの皿洗い
・エメット
三十歳前後、新入りの皿洗い
・モス
六十五歳前後、古参の皿洗い
・バローズ
十八歳前後、エメットの後釜
と、役ごとに年齢にバラツキがあります。
これをほぼ同い年の平泳ぎ本店の俳優で上演するので、ともすれば各所に無理が出てきます。
たとえば六十五歳の「モス」という役をお年寄り然と、たとえば髪を白く染めたり顔にシワを書いたりして演じることも出来るのですが、それをしてしまうとどうしても観ていて「嘘じゃん」という感が拭えません。
観ていて「嘘じゃん」となるのもつまらないのでどうすっか、と考えて元々の彩流社から刊行されている『洗い屋稼業』の翻訳者である吉原豊司さんに相談したところ、テキレジ(台詞の修正)、あるいは登場人物の翻案のゴーサインを頂きました。
元が英語の戯曲なので一人称は”I”だけな訳ですが、日本語にしてしかもそれを若者だけで上演するとなると一人称が「ワシ」なのか「僕」なのか「私」なのか「俺」なのかで随分印象が変わってきます。
二人称にしても「君」なのか「お前」なのか「あなた」なのかで印象が変わります。
また語尾を少し変えるだけで微妙にニュアンスが変わる台詞もあり、そんな日本語の機微を楽しんでいろいろ探りつつ読んでいます。
「戯曲の字面に引きずられるな!俺たちが劇(ドラマ)を引きずるんだ!」「言いづらい台詞はどんどん直せ!言い換えろ!ひねり出せ!」と僕がやいやい言いつつ、尋常ならざるテンションでテキレジ作業が進められました。
どうせ演劇なんて嘘なんだから、いっそフィクションの度合いを高めて正々堂々と演劇の嘘で押しきった方がすがすがしい。
平泳ぎ本店の基本戦略は「演劇好きをこじらせたシアトリカル・パワーポップ!」と、勝手に命名しました。
新劇的リアリズムからも、現代口語的リアリズムからも遠く離れて。
変てこなものが出来るかもしれません。
平泳ぎ本店 第1回公演
“The Dishwashers”
予約受付中です。
松本