はい。
ということで本日は吉原豊司訳『洗い屋稼業』より、主宰が個人的に「これは!」と思う台詞を独断でおもむろにピックアップして参ります。
タイトルにもあるように「主宰」の「駄文」なので、くれぐれもご容赦ください。お互い恨みっこはなしでお願いします。
(果たして僕は一体何と戦っているというのか?)
と、その前に、チケット予約の状況ですが、
11/22(日)プレビュー公演18:00B
11/23(月)18:00A
11/27(金)19:30B(終演後ポストトーク 登壇者・鵜山仁さん)
のあたりがとても好評で、残り少なくなって参りました。
シアタープーに鵜山仁さんを呼んで本当にいいのか?という一抹の疑念はありますが、50人も入らない場所で当代屈指の演出家の方のお話を聞けるというのも面白いですよね。滅多にない機会です。
このあたりは演出の藤代のマンパワーです。どういう経緯で出演してくれることになったかは当日の話に出るかと思いますが、「強いお酒をガンガン勧めればいろいろ喋ってくれるんじゃないですかね」みたいなことを藤代が言っていました。(シアタープーはワンドリンクがつきます。)
なので当日ご来場される方は、ポストトークでのお話の内容はくれぐれもご内密にしていただきますようお願いいたします。
あとこないだふとした拍子に藤代が「私の演出は(宇宙人といわれる)鵜山さんほど分かりにくくない。全然分かりやすいと思う。」と言ってたのも小耳に挟みました。
果たしてその真意とは…?
はい。
ということで台詞の話です。
なお当日の上演台本では一部テキストレジ(改編)してある場合がありますので予めご了承下さい。またネタバレ(?)を最小限に防ぐため、役名は伏せることにします。
いきましょうか。
「おまえさん、この仕事に向いているといいがね。」
「どうしてです?」
「ふとそう思っただけだ。その手を見てな。」
この戯曲の第一声です。もう何か起こりそうな予感しかしません。
「おまえさんは皿洗いを負け組の仕事だと思ってる。だが、それは間違いだ。」
「負け組の仕事だなんて思ってません。いや、思ってるかな?そうかもしれない。少なくとも、勝ち組のやる仕事だとは思ってないものね。」
このあたりからもうキナ臭いです。「いや、思ってるかな?」らへんになんというかイラッとさせられます。
「いずれにしろ、この仕事には将来がない。将来がまったくない、クソみたいな仕事です。わたしが必要としてるのは、こんなクソみたいな仕事じゃなくて……あ、すいません。見方によっちゃあ、立派な仕事かもしれません。でも、わたしの持ってる資質が生きないんです、この仕事では。」
なんとなくこの台詞を喋っているキャラクターが見えてくるような気がします。「……あ、すいません。」じゃねえよ!というか。かなり言いたい放題言ってますが、どうやら己の身の丈にそぐわない職場にいるみたいですね。
「いわれもない自己中的(ママ)自尊心かもしれないけど、ここにいると、それがどんどんなくなっていくのが感じられるんです。どっぷりここに嵌まり込んじまったら、一体わたしは何者になっちまうんです?」
彼なりにちょっとずつ追い込まれていってるみたいです。果たして彼は何者になるんでしょうか。気になりますね。
「だが、ワシはそうしない。なぜかって?ワシには自制心ってものがあるからだ。ワシは自分の自制心を誇りに思っている。自制心こそワシがワシたる所以なんだ。ワシはこの仕事が好きだ。これがいい仕事だからじゃない。これがワシの仕事だからだ。仕事、そして、死。そのほかはみんな、回り道に過ぎない。」
これを三回くらい読むと「ワシ」という文字がゲシュタルト崩壊してきます。
ワシは仕事に対してかなりハードボイルドな価値観を持っているようです。「仕事、そして、死」とかもうハードボイルドの極み、男の中の男といってもいいんじゃないでしょうか。
「正業?わずかな貯金すらできないこれが正業なんですかねえ。不動産や株屋は正業じゃないとでもいうんですか?チャンスを追うだけで、額に汗しないから?手を汚さないから?だから正業じゃないとでもいうんですか?」
これは役者と言えど事実上のフリーターたる我が身をつまされるような台詞です。舞台かバイトかどっちが自分の仕事なんだか分からなくなることがままあります。演劇なんてただでさえ端から見たら遊んでるようにしか見えませんからね。それはさておき、この台詞を言った彼はかなりイライラしてるようです。
「おまえさんにも、そのうち解る。上に這い上がるチャンスなんてのは滅多にないってことがな。上がだめなら、横を見るよりほかしかたない。ここに積んである数多の皿を見てみろ。どれが選ばれるに値する皿だと思う?え?人間だって同じだ。いつ選ばれて上に行くか、その順番をじっとまってるよりほかしかたない。」
はい、これも同期とかと話してるとよく出てくる若い役者の鬱屈した気持ちに通じるものがあります。沁みます。「オーディションは落ちまくるのが当たり前。いつ売れるかじっと待ってるよりほかしかたない。」というか。
(じっと待ってても仕方あるまいと思いあまって平泳ぎ本店を始めた訳ですが…。)
「今の私には何もない。昔もそうだったけど、あの頃のわたしには、少なくとも『やる気』があった。今のわたしは、それすら失おうとしてるんです。」
「何もないなんてことはなかろう。皿洗いとしての経験がある。それを生かしたらどうだ。」
「皿にこびりついたピューレの削ぎ落とし方、鍋に焦げついた脂身のこそぎ方、グラスにベッタリついた口紅の洗い方、これが経験だっていうんですか?」
これもフリーターあるあるでしょうか。本当にやりたいこととバイトでのスキルが直結しない悲しさというか。とはいえあらゆる経験はいつか役に立つはず、と個人的には信じています。
「これが熱湯噴射器だ。こうして……」
「熱湯を噴射するわけですね。」
「おまえさんにとって最強の武器だ。」
はい。これは外せません。個人的にもう一番好きな台詞です。熱湯噴射器なんだから「熱湯」を「噴射」するに決まってるだろ、というのは勿論の事、「最強の武器」というのもなんだか素朴でいい表現ですよね。いくらかチープというか、なんとなくそう言ってしまうあたりに洗い場の場末感というかやるせない雰囲気が伝わってきます。
はい。
といったところでしょうか。
それぞれの台詞について、詳しくは本番をご覧いただければと思います。
こちらの吉原豊司訳『洗い屋稼業』彩流社は当日劇場でも販売する予定ですので、もしよければ是非お買い求め下さい。
といったところで、
平泳ぎ本店 第1回公演
“The Dishwashers”
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松本