第7回公演に先立ちまして、5月4日に行われた第2回新潟劇王の審査員講評、昨日の予選Bブロックの際の講評に引き続きまして決勝分を公開いたします。
(他団体の皆さまの分の講評をすべて文字起こしすることは叶わず、平泳ぎ本店の上演に関する部分だけとなっております。あしからずご了承ください。)
重ね重ね、審査員の皆さまに言葉にしていただいたおかげで、上演の空気感をお伝えするものになっているのではないかと思います。
とてもあたたかい講評の時間となり、新潟劇王という大会へ今回参加できたことを一同深く感謝しています。
この場をお借りして、改めて第2回新潟劇王の関係者の皆さまに深く感謝いたします。
黒澤世莉 さん
松本さん、お疲れさまでした。
昨晩、僕とノブさん(審査員、中村ノブアキさん、 JACROW)で議論になったんですよ。「平泳ぎ本店の作品は普遍性があるか否か?」みたいな論点で。おそらく演劇をやってらっしゃる方も客席には多いと思うんですけど、演劇をモティーフにして作品をつくってそれを上演するという時に、果たしてそれが演劇とは関わりのない観客にもリーチするのだろうか?という議論がありました。
答えは出てないので皆さんにもぜひ聞きたいなって思うし、松本さんも聞きたいですよね?観客の皆さんがこの作品をどうとらえられたか。(松本「ええ、ええ。」)平泳ぎ本店の皆さんもきっと皆さんの声を聞きたいと思うので、SNSにも平泳ぎ本店さんはアカウントを持っていらっしゃるから、「私はある種の普遍性があると思います」とか「私は内輪ネタに感じます」とか、そういう声が聞けると僕もノブさんも「ほら俺の方が合ってたーーー!!」みたいな感じで、あとで遊べるので。
デウス・エクス・マキナについてちょっと補足したほうが良いかなって思って、観客の皆様はもうご承知かも知れませんけども。デウス・エクス・マキナは「機械仕掛けの神様」っていう意味です。古代ギリシャの演劇とかで最後どちゃーっと人間達が収集がつかなくなる。それで最後に神様が出てきて話をまとめてくれる。
今回の作品もそういうものが最後に出てきて終わるっていうお話なんですけど、なんとなくそのデウス・エクス・マキナに抗おうとしていることの効果がちょっと緩いかなとは思って。(舞台機構の)バトンて昨日降りてなかったよね?(松本「はい。」)バトンが最後降りてきた時に、「それは何だーーー?!」って、僕は思って。「だったら俳優のからだだけでやれよー!!お前らー!!!」的な謎の気持ちに僕はなってましたが、皆さんどうでしたか?
えーーー、お疲れ様でした。笑
中村ノブアキ さん
お疲れ様でした。
これは本当にどうでも良い話なんですけど、実は一回目を観た時にも思ったんですけど(出演の)松永さん(松永健資)が僕の知人にそっくりなんです。その僕の知人も俳優をやっているんですけど、本当に似てるなあ、と思いながら観ていました。なんならお芝居の質も似てるんですよ。そういう意味で、いろんな意味で不思議な体験をさせてくれたなって思っています。
さっきの基準(「決勝での上演に際して、空気をつくれたか」「一回目よりもより深められたか」)でいうと、(一団体目の中央ヤマモダンさんへの評価とは)逆です。
「空気のつくり方」という意味では、もう非常に上手いなあと。そこはかなり稽古を積んだこともわかるし、俳優同士の信頼関係というのも実はよくわかります。だから舞台上でのコンビネーションが凄まじく良い、だから安心して観られました。
ただ、一回目に比べて二回目は深まったかっていうと、結局戯曲で言っていることそのものがある種リフレインだし、一回聞けばわかるような内容ではあるので戯曲上の新しい発見という点ではサンカクだったという意味において、その辺は非常に難しいんですけど…。
俳優を見せるという意味においての圧倒感というのは本当に素晴らしいので、そういう意味で今日の上演も本当によかったなと思います。お疲れ様でした。
七味まゆ味 さん
私も大好きな作品で。はい、大好きですもう。これもさっき(中央ヤマモダンさんへの講評)と同じで、好きなシーンがたくさんあって、全部言えるくらい本当に素敵だなって思って、
ただ、今日のステージだけでいうと何かが足りなかった気が私はした。好きなんですけどね。
私がこの作品について何が好きだったかっていうと、たぶん「演劇とは何か」っていう議論ができるところがすごく素敵だなって思っているんです。私の所属劇団でもそういう創作をすることがあると思ってるんですけど、たとえばここりゅーとぴあも能楽堂がありますよね?私は割と「神に捧げるもの」とか、そういうイメージを演劇に対して持っているんです。「神楽舞」とか。
そういう意味で、この作品について、肉体的なパワーを押し出してくる作品ていうよりは、アンサンブルで何かを、魂を、ささげているように見えたんですよね。そういう瞬間が実は昨日の上演にはあって、そこに感動したんですよ。そしてやっぱりそれを期待してしまっていると、ちがったの今日は。(「神に捧げるもの」というよりは、)演劇だった、今日は。って思ってしまって。ただ、好きではあるんですけど。
だからすごく難しいものだなって思うんです、演劇って。なんなら私もそういう瞬間を求めるために演劇をやっているところもある。それは俳優の力で生み出すものだけれど、観客や空間に呼応して生まれるものでもあるし…ステージ毎の些細な変化で変わってくる、それがどうしたら出現するのかの答えは私の中でも出てないんですが。ただその昨日の上演で感じたものを、今日の上演からは私は感じなかった。
っていうのが正直あるんだけど、ただそれを抜きにしても演劇作品として本当に素晴らしいチームワークと肉体と、あとは演劇に対する想いとか気持ちがあると思うんですね、この作品には。いろいろ詰まっている。それはとても感じました。そして「演劇とは何か」、「俳優とは何か」、「どこまでが演劇か」っていうようなところを考えさせてくれるいい作品だったなと思います、ありがとうございました。
佃典彦 さん
お疲れ様です。
えっと、結局、(平泳ぎ本店の作品が)演劇として普遍的かどうか、の話はどっちがどっち?
中村 僕は厳しいんじゃないかと。
黒澤 僕は突破できるんじゃないかと
佃 あぁ、なるほど…。
えっとね、僕ね、作品について普遍的というかどうかはわからないけど、感覚としてはね、たとえば僕スポーツではプロ野球が好きなんです。中日ドラゴンズのファンで。野球の試合は結構球場行ったりして観るんですけど、つい先月横浜でDeNA戦を観に行こうと思ったら、コロナで中止になっちゃったんですよね。
で、結局プロ野球はやってないものだから、ほんとうにたまったま、千葉ジェッツとどこだったかな、バスケのBリーグの試合を観に行ったんです。僕バスケットボールのルールはほとんどわからないの。枠の外から打ったシュートは3点になるんだっていうことくらいしか全然わからなくて、さっぱり。
だけど、おもしろかったんです、すごく!!ルールは全然わからないんだけど、そのスタジアムの熱気や観客の様子もそうだし、まあすんごいおもしろいな!っていうことに、僕は(平泳ぎ本店の作品は)すごい近いなって思っていて。だからまあどっちかっていうと僕は「突破できる」派というか、作品として普遍的なのかどうかは別にしてね。演劇のことをまったくわかんない人が観ても十分おもしろがれるんじゃないかなとは思っているというのが僕の答えで、、、(「チーン!」と、制限時間のベルが鳴る。)
終わっちゃったなあ。笑
えーっとね、あの、僕やっぱりこの、俳優、今回の役者さん三人について「僕はこの人たちをいつまでも見ていられるなあ」っていう感じがやっぱするんですよね。それがいちばん、大きいかな。その話っていうか、戯曲そのもののドラマやおもしろさがどうということではなくて、俳優。
いつかね、この『ニポン演劇盛衰史』の中に「佃典彦」の名前が入るように僕も精進したいなと思いました。
第2回新潟劇王で上演した『俳優の魂/贋作 不思議の国のニポン演劇盛衰史』を東京は目白、シアター風姿花伝にてフルサイズで上演します。6/23-26です。こちらもどうぞご期待ください。