どうも。
平泳ぎ本店 主宰の松本です。
先の公演が終わり、あまり何もうまく手につかなかったので残務処理もそこそこに放り出してしばしぼーっとしたりきっちり体調を崩したりしつつ、追われるように元のアルバイトの生活へ戻っていたのですが、諸々年を跨ぐのはいかんのでぼちぼち色々やんないとなという感じです。
ここらで一発己に喝を入れねばなりません。
今年の決着は今年のうちに。
ということで、第1回公演をきわめてざっくり振り返っていきます。
はい。
公演そのものは無事に終わりました。8日間14ステージ過不足なくです。最後まで誰一人欠けることなく、1ステージも飛ばすことなく終えられたことはとても良かったのかなと思います。
普通なら絶対やらない、やるはずがない公演数なので「第1回公演で8日間14ステージというのは多すぎるんじゃないか」と内外から散々言われたのですが、主宰としては100%やって良かったと思います。
毎日ステージを重ねるごとに着実に芝居が変わっていくのが手にとるように分かり、また個人的にもひとつの作品を14回観ることで演技についても俳優についても演出についても初めて分かることが沢山ありました。
総来場者は262名でした。これは目標を大きく下回ったのではっきり言って大失敗です。各方面から「若手はまず500人動員することを必死こいて目指せや」と言われましたので、一応今後はそうしようと思います。
公演の収支で言うと「スタッフさんへの人件費」や「劇場費」という一番大きな支払いに関してはクラウドファンディングでの利益とチケット収入のみで支払いが出来ました。今回劇場費が千秋楽の日の支払いだったので、前もって皆で立て替える必要もありませんでした。
そして平泳ぎ本店の面々から前もって預かっていた10,000円の返金と、各自が立て替えていた分の領収書の精算もあらかた終わり、今回参加した彼らの負担は0ということに一応出来ました。
養成所にいた頃は数十万円の授業料を払って発表会に年間8~10ステージ立っていたのが、今回は0円で14ステージという事です。
準備期間が半年という短い時間でこれくらいの規模の公演を打てたのは、まあそこそこ良かったのかなと思います。「発表会」という所から少しは進歩が見られるかなといったところでしょうか。
とはいえ、もちろんギャラまでは支払えません。
むしろ公演期間中アルバイトを休んだので、その分マイナスというのが大体の実情じゃないかと思います。
たとえば、本来彼らに支払われるべき出演料や演出料といったギャラ(1ステージ5500円×14ステージ×5人)と、今回クラウドファンディングで調達した分の資金をすべて自力で調達しようと思うと、ちょっと気が遠くなります。
チケット代を値上げすれば済む話ですが、僕らの様な無名の若手の公演に5000円も払う人は多くはありません。
何が言いたいかというと、2回3回と続けるとは言ったものの「これはかなり難しそうだ」という、主宰としての偽らざる感想です。
今回のような公演を続けたところで、どう考えたって今後黒字になるはずがありません。食えないどころかやればやるだけ生活が苦しくなるのが目に見えています。僕自身あれだけ疑った「演劇では食えない」という言葉がこれだけ骨身に沁みたことはありません。
平泳ぎ本店が頑なに「劇団」を名乗りたくない理由もまたこの辺にあります。
劇団を名乗った瞬間に否応なく劇団員に対して金銭的な負担を強いることになる気がするからです。
何というかまあ、一人暮らしのフリーターが切れる身銭にも限りがあります。そしてまた、誰しもいつまでも親のスネをかじっていられる訳ではありません。
東京でフリーで、というのは稽古場や劇場を持たずに演劇をやろうと思うというのはこういうことなんだなと思ってしみじみしております。
とはいっても「もっと面白い作品が作りたい」という気持ちにはなるたけ素直に、どうにか作品を作り続けたいなとも心から思っております。
とりあえず今回はこのような感じで、年内で残り何回かに分けて振り返りたいと思います。
なまじ間が空いてしまったのでリハビリの様な趣もあります。
これはシンクの中に溜めてあった紙片です。よく見ると紙皿を手で1枚1枚破ったやつです。
当初シンクの中に発泡スチロールやビーズ、紙吹雪を入れておくという案もあったのですが、「それではスペクタクルのための小道具になってしまう」「敢えて紙皿にすることで、ラストシーンにおいても安易なカタルシスを拒否してはどうか」といった小道具の辻本さんからの提案にキャッキャ言いながら乗っかり、皆して紙皿を300枚くらい手で千切ったのでした。
「気付く人だけ気付けばいい」とは言い条、終わってしまえば思わず言いたくなるようなお気に入りというかこだわりでした。
余談ですが、クリエイターの方々は往々にして「これ実はこうして作ったんです」という話を
するときに一番活き活きとされる気がします。もの作りの醍醐味でしょうか。そういう話を聞くのが僕はとても好きです。
ポストトークの際に鵜山仁さんにまで「本物の皿で見たかった」と言われたときにはかなりゲンナリしましたが、平泳ぎ本店としてはそれなりの愛着と確信をもって使った、そんな紙皿でした。
続く
松本