稽古場で受けた酷い仕打ちシリーズ

ふとしたことから自分(または周りの誰か)が稽古場で演出家等から受けた酷い仕打ち、というので書き出してみたところ、
余りに軽快に筆が走ったために、先ほど我にかえってすべて消しました。

そんなの書いたところで誰も幸せにならないですよね。当たり前ですが。

えぇ。

たとえば、恐い演出家としてよくネタになるのが蜷川幸雄さんがかつて俳優に向かって灰皿をブン投げたというやつですが、「それはただの暴力だぜ」とクールに言えばそれまでです。

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演劇も芸術なので、どこまでが芸術的に不可欠な領域で、どこからが絶対にやってはいけない人格否定なのか曖昧なところがあります。

まぁ結局は過程はどうあれ出来上がった作品がすべてと言えばすべてなのですが…。

これは僕の個人的な感覚ですが、稽古場で演出家から言われて一番辛いのが「分からない」という言葉です。

「何しようとしてるのか全然分からない」「何を言ってるのか分からない」等々。

俳優として稽古場にいる以上誰しも何かしらの企みや意図は持っていますし、相手役なり観客なりに何かを伝えたくて台詞を喋ったり動いたりします。

もちろん自分が下手くそで技術も足りないのは百も承知ですし、世阿弥の言う「離見の見」というか、自分の思っているのと実際にやっていることが一致していないのも分かっているつもりです。

それでも頭から「それ分からない」と言われた時の気持ちはなかなかいたたまれないものがあります。

それで特に具体的なアドバイスも貰えずにやり直しとかになるともうたまりません。

何でそんなに悲しいかというと、稽古場に自分が持ち込んだ演技、自分なりに考えたアイディアやプランというのはそのまま自分という人間の表現だからです。

こう書くとかなり青臭い感じが拭えませんが、目に見えない人の心を扱う演劇という表現にあって、目の前の他者の表現の意図を汲むことさえせず自分一個の価値基準で「分からない」と断罪してのける人の無神経さが信じられない、とかねがね思っておりました。

それはコミュニケーションの放棄でしかないだろう、と。

そんなあぐらをかいた演出がしたけりゃ言う通り動く木偶の坊だけ集めろやタコ助が、と、さすがに僕もそこまでは思いませんでしたが、なにしろ「分からない」というのはそれほどに哀しいことでありました。

というのも、演劇を始めて一年目くらいの時にこの本を読んだからだと思います。

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はい。

いささかというかかなり安直ですが、平田オリザさんの『わかりあえないことから』(講談社現代新書 2012年)です。

今しがた読み返していて「わかりあえない人間同士が、どうにかして共有できる部分を見つけて、それを広げていくことならできるかもしれない」(p.208)というのを見つけて「そうだよな」と思いました。(こう書くと馬鹿っぽいですね。)

なにせ演劇は分からないことだらけです。

人間としての俳優同士、俳優と演出家、或いは俳優と戯曲に書かれた役の登場人物など。分かることの方が少ないかもしれません。

そんなときに「俳優の本当の仕事は俳優という自分の個性と、演じるべき対象の役柄の共有できる部分を捜しだし、それを広げていくという作業」(p.197)と書かれているのを読むと、なんだかひとつの方針が見えた気にもなります。(気のせいかもしれません。)

そのために、皆でサボることなくきちんと作品について、役について、言葉を尽くすことが大切なのかなと思います。

平泳ぎ本店でもそれが出来れば、きっと面白い。

たしかこの本の中でも木村光一さんか鵜山仁さんが「俳優が”A”って言って演出家が”B”っていったら、大体正解は”C”」みたいなことを言ってた気がします。

要は作品の解釈などについて俳優と演出家どちらかが正しいということはなくて、話し合ってもうひとつ答えを出すのがスマートなやり方だ、というような話だったと思います。

これってスケールはかなり小さくなりますが、民主主義の話でもあるのかなと思います。

異なる意見、思想を持った他者が、どうしたらもっと豊かに暮らせるか、みたいな。

“The Dishwashers”に出てくる登場人物も、かなりのレベルでわかりあえない人たちです。

それが哀しくなるのか、滑稽になるのか、はたまた人間讃歌になるのか。まだまだまったく未知数といったところです。

平泳ぎ本店 第1回公演
“The Dishwashers”
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松本

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